「それ、説明したよね?」の落とし穴
~真意を伝えるために前提を共有する~
今、ある企業からご依頼された若手社員向けの研修プログラムを作っています。
このプログラムは昨年に続いて2年目。
昨年は20名強の若手社員の皆さんがZoom上でつながって行う対話型の研修を実施しました。全体としてはなかなかな手応えで、「思いのほかいい場になったなぁ」と思っていました。
ところが、後日届いた受講者アンケートに気になるコメントがありました。
ニックネームで呼び合うことに違和感。
なぜそんなことをするのか分からなかった。
それを見たとき、正直なところ、「え?そこ?」と思いました。
講師業を長くやっていると、「それ、説明したじゃん」という気持ちになることがあります。
そして大抵の場合、本当に説明したかどうかは怪しい。笑
だって私にとってはごく普通のことなんだもん。
先日行われた人事担当者との打ち合わせでは、「説明したじゃんよー」などとは言わず、「ですよね。ニックネームで呼び合うなんて普段しませんもんねぇ」などと話を合わせつつ、改めてそうした理由をお話ししました。
そもそもワークショップには、大切な4つの特質があります。
① 協働性
互いに影響を与え合い、相互作用が生まれる
② 実験性
遊びゴコロを持ち、まず試してみる
③ 非日常性
いつもの固定観念から少し距離を置いて考える
④ 民主性
誰もが対等に尊重され、安心して発言できる
この4つの特質が表れてこそ、ワークショップの効果が発揮されます。
(ワークショップの研究者である安斎勇樹さんの受け売りです)
例えば自然豊かな場所で合宿を行うのは「非日常性」を高めるためですし、付箋紙に意見を書くのは全員が意見を表明する機会をつくって「民主性」を高めるためです。
使える手段が限られるオンライン環境の中で少しでも役職や所属の壁を取り払い、フラットな対話を生み出す工夫として「ニックネームで呼び合う」という手法を取り入れたわけです、と説明しました。
すると人事担当者の方は、「なるほど、そう言ってもらえれば納得です。今年はぜひ、それを受講者にも説明した上で始めてください」と言われました。
その瞬間、「ああ、なるほどなぁ」と思いました。
ニックネームで呼び合うのは、単に場を盛り上げたいからではありません。
でも、前提を共有していなければ、参加者から見れば「なぜ急にニックネーム?」となるのは当然です。
発信する側の私は背景も目的も知っています。
だからつい、「そのくらい分かるでしょ」と思ってしまう。
でも、受け手はその前提を知りません。
だからこそ、「何をするか」だけでなく、「なぜそうするのか」を伝えることが大切なのだと思います。
仕事も同じではないでしょうか。
新しいルールを決めるとき。
方針を示すとき。
誰かに協力をお願いするとき。
結論だけを伝えると、違和感や反発を招くこともあります。
でも、その背景や目的、コンテキストを共有すると、受け止め方は大きく変わります。
人は説明に納得するのではなく、前提に納得する。
だからこそ、何かを伝えるときには「結論」だけでなく、「なぜそうするのか」という物語も一緒に届けたいものです。 (文:大原)
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