二人の子どもが大学生になり、離れて暮らすようになってからは、彼らの暮らしぶりに口を出す場面はほとんどなくなりました。長男宛にたまに届くカードの支払い督促だけは、見るとイラっとしてLINEしちゃいますけど。
それでも、困ったときはいつでも相談できる相手でいたいし、最後は本人が選択できるように関わりたい。—そんな思いが強くなっています。
振り返ると、私が子育てで大切にしてきたのは、"本心を話せる関係性"と"本人が選べる余白"の2つなんだと思います。
そして年度替わりのこの時期に思うのは、これはそのまま“新任の立場に立つ大人”にも当てはるんじゃないか、ということです。
立場が変わる人にとっては、今は特別な季節です。
新任リーダー、新任担任、新任管理職・・・
肩書きが変わると、期待も不安も一気に押し寄せて来ますよね。
だからこそ、最初の90日で周りの人たちとどんな関係性をつくるかが、その後の一年を大きく左右します。
いわばこの時期は、"関係性の初期設定"を整えるための貴重な時間といえます。
✅「本心を話せる関係性」をつくる
新しい環境に入ったばかりの人は、誰でも少し身構えています。
「こんなこと聞いていいのかな」「間違えたらどうしよう」
そんな不安があると、行動も発言も控えめになってしまう。
自分自身も部下も、そんなモードになりがちなんじゃないでしょうか。
ハーバード大学のAmy Edmondsonが提唱した“心理的安全性”の研究では、「罰せられない」「否定されない」という安心感があるほど、人は学び、挑戦し、助け合えるといいます。
だからこそ、この時期はかける一言がとても大切です。
「まだ慣れないことも多いよね。分からないことは遠慮なく聞いてね」
そんな小さな声かけでも、相手の緊張はふっと緩むでしょう。
教育現場も職場も同じで、“安心があるから、行動が生まれる”のだと思います。
だから、本心を話せる安心感をつくることこそが、初期設定の第一歩になります。
(馴れ合いの関係をつくることとは違います)
✅「本人が選べる余白」を残す
もう一つ意識したいのは、相手の自律性を奪わないようにすることです。
これについては、前号の「“やらされる”と人は動かない。じゃあ、どう関わる?」でお話ししましたね。
これは子どもも大人も共通で、自分で選べると前向きに動きやすくなります。
この“選択の余白”もまた初期設定の大事な要素です。
新年度の最初の90日は、関係性の初期設定を整えるための特別な時間です。
最初に「安心感」と「自律性」をセットで渡すように意識すると、リーダーとしての一年はぐっと滑らかになるでしょう。
そして何より、リーダー自身が完璧である必要はありません。
「私も一緒に学びながらやってます」と言える人の方が、周りの心理的安全性と自律性を育めるんじゃないでしょうか。 (文:大原)